2021-12-13

台湾におけるスペアパーツに関する意匠保護制限の導入をめぐる論争

2017年に、ドイツ自動車メーカーのダイムラーと自動車部品メーカーのヴァレオが相次ぎ台湾の自動車ヘッドライトメ-カーDEPO(帝寶社)をスペアパーツに関する意匠権侵害で訴えた事件等をきっかけに、台湾自動車部品メーカー業界は、パテント法において、複合製品の交換用部品(即ち、スペアパーツ)に関する意匠保護制限(いわゆる、修理条項Repair Clause)を導入すべきだと唱えている。
 
台湾の自動車部品メーカー業界は、アフターサービス用の修理部品の製造に強みがあり、業界の年間売上高もNTD2000億に達しているという。これが、前記事件が自動車部品メーカー業界に大きな波紋が広げている背景にある。また、国際的に修理条項をめぐる議論が依然として激しい一方、EU共同体意匠の修理条項に続き、2019年に自動車メーカー大国であるドイツにも修理条項を導入する動向があったので、台湾の自動車部品メーカー業界は、前記規制の目的が消費者保護、競争強化にあると述べつつ、アフターサービス用の自動車の交換用部品で交換を実施する行為に対しても、パテント法における修理条項を導入すべきと主張している。
 
一方、台湾の自動車部品メーカーの要求を受け、2020年に立法委員が修理条項に関するパテント法改正案を提出したほか、主務官庁も修理条項に関する意見募集会議を実施したものの、主務官庁は意匠権者の権利を保護するという立法目的に鑑み、このような条項を導入することに慎重な姿勢を取っている。スペアパーツに関する意匠保護制限のあり方については依然として結論が付けられないのが現状である。今後も引き続き、議論、改正案の動向に注目していく必要がある。
前の記事 一覧に戻る 次の記事