2018-10-15

刑事告発と引き換えに原告に訴えの取下げを強要した疑いにより、裁判官を忌避する裁定

台湾高等法院は、同院控訴審の受命裁判官が、被控訴人(原審原告)が原審において主張した融資が貸借対照表に記載されていない点が商業会計法違反なり、刑事告発を示唆するなどして同人に訴えの取下げを強要した疑いを認め、職務の執行について偏頗のおそれがあることから裁判官の忌避を認める裁定を下した(臺灣高等法院107年度聲字第422號裁定(107年9月10日))。

本件本案は、原告(貸付人)が被告(借入人)に対して、金銭消費貸借契約に基づいて、100萬元の返金を求めた訴訟である。第1審では、原告勝訴の判決が下された(臺灣新北地方法院106年度訴字第3572號判決(2017年12月19日))。これに対して被告が控訴したところ、控訴審の受命裁判官は、弁論準備期日において、職権で原告の会社の貸借対照表を取り調べた。貸借対照表上に商業会計法上本来記載されていなければならないはずの本件紛争の借入れが記載されていなかったことから、裁判所は、告発義務を有することを理由として原告に対し会社の代表者や経理関係担当者の個人情報を提供するように命令した。

このような訴訟指揮に対して、原告が裁判官忌避の申立てをしたのが本件裁定である。

裁判官の忌避を認めた裁定理由について、原告がまずは前提として係争債権の存在を証明しなければ、そもそも貸借対照表には不実の記載もしくは意図的な省略があったかどうかの問題は生じない。しかし、この点本案の借入金返還請求権が認められるどうかは控訴審の合議体によって判断されていない。にもかかわらず、受命裁判官は弁論準備期日において、一方的に、貸借対照表上の借入の記録及び商業会計法の規定違反を問題視して、犯罪告発を理由に、原告に会社の代表者や経理関係担当者の個人情報を提出するよう命令している。そのような職権行為は、法律上根拠がなく、民事訴訟の審理よりも犯罪調査に主軸がおかれており、民事訴訟における裁判官としての職務範囲を逸脱しているといえる。従って、受命裁判官の上記訴訟指揮行為は刑事告発の脅しによって訴えの取り下げを強要したものとして、職務の執行について偏りがあったという原告の忌避の申立てが、認められた。
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