督促手続とは、債権者からの申立てに基づいて、原則として、裁判所が債務者に対して金銭等の支払を命じる制度である(民事訴訟法第508条第1項)。裁判所は、債務者の言い分を聞かないで、金銭等の支払を命じる「支払督促」の申立てについて、決定を下すとされている(同法第512条)。支払督促の送達後20日内に、債務者から異議(支払督促の内容に対しての反論)の申し立てがない場合には、その支払督促は、確定判決と同一の効力を有するものとされる(同法第521条第1項)。引いて債権者は、確定判決と同一の効力を有するものとされた支払督促に基づいて強制執行の申立てをすることができる。但し、債務者が支払督促の送達後20日内に督促異議の申立てをすると、通常の訴訟手続に移行し、その手続の中で、裁判所が改めて債権者の請求が認められるかどうかを審理することになる(同法第516条、第519条)。
近年、督促制度が詐欺グループに悪用される案件が相次いでいる。例えば、詐欺グループが、先ず贋物の裁判所書類等のものを被害者に送って、被害者が贋物であると分かる等の理由で当該書類を相手にしなければ、引き続き本物の「支払督促」を相手にしない可能性が高と予想されるので、今度は当該被害者に対して、裁判所に「支払督促」を申立てる。もし当該被害者が本物の支払督促に対し異議の申し立をしないと、詐欺グループが、確定判決と同一の効力を有するとされた支払督促をもって、当該被害者名義の財産に対して強制執行手続を行う。
このように督促制度が悪用される案件が次々起こっているので、有識者が督促制度の改正を呼びかけている。一番検討されている改正すべき内容は、支払督促の効力である。即ち、支払督促の効力が確定判決と同一の効力(確定力)を有せず、強制執行を行う効力(執行力)のみを有すると改正すれば、なお本当の債権者の督促制度を通して法的権利を保障できる一方、前述のような詐欺事件であれば、被害者も担保を立てることにより、一時強制執行手続を停止させ、詐欺グループを相手取り確認訴訟を提起することにより、被害者の詐欺グループに対する債務が存在しないことを裁判所に確認してもらい、法的救済を求めることができることになる。督促制度の改正の動きに注目が集まっている。