著作権法の一部を改正する法律案が、2021年4月8日に行政院で可決され、立法院(国会)に提出された(
https://www.tipo.gov.tw/tw/cp-87-888476-75dbe-1.html)。主な改正内容は以下のとおりである。
- 請負・委託と職務著作における著作権の帰属の変更
A社が著作物の作成をB社に委託し、実際にはB社の従業者が職務上、当該著作物を作成したという場合の処理が問題となる。現行法では、
請負先・委託先が自然人か法人かにより、著作権の帰属が異なる。請負先・委託先が自然人の場合は、12条により、契約に別段の定めがない限り、完成した著作物の著作者(著作者人格権と著作財産権は著作者が原始的に取得する)は請負先・委託先となる。反面解釈で契約によって、請負元・委託元を著作者と約定しても差し支えない。一方、請負先・委託先が法人の場合は、実際に創作行為をするのはあくまで当該法人の従業員であるため、まずは法人の業務において職務上作成された著作物に関する11条の規定を適用しなければならない。11条により、契約に別段の定めがない限り、職務上作成された著作物の著作者人格権者は、実際に創作した従業員となる一方、当該職務著作物の著作財産権者は、法人となる。反面解釈で契約によって、法人を原始的に職務著作物の著作者人格権と著作財産権を取得する著作者とすることは差し支えないが、いずれの場合にも、請負元・委託元は請負先・委託先法人との契約によって請負元・委託元を著作者と直接約定することができない。請負元・委託元が著作財産権を取得するためには別途、請負先・委託先ないしその従業者と著作財産権譲渡の契約を交わす必要がある。さらに、著作財産権が譲渡されても、著作者人格権は著作者に残るため、著作者人格権の行使をどうするのかを決めておく必要もある。
そこで今回の改正案では、上記の複雑な法律関係を解消するために、請負先・委託先が法人であっても、職務著作物に関する11条の規定を適用することなく、12条のみを適用し、契約によって請負元・委託元を著作者と約定することができるようになる。
- 「公の放送」と「公の送信」の定義の変更
現行法では、情報通信技術自体の違いにより、「公の放送」と「公の送信」の二つが区別される。「公の放送」とは、無線、有線又はその他装置などの「放送システム」で情報を伝達することをいう。それに対して、「公の送信」とは、無線、有線のインターネット又はその他の「情報通信方法」で情報を伝達することをいう。改正案では、情報通信技術自体の違いではなく、公衆によって同一の内容の伝達が同時に受信されるか、あるいは公衆が自ら選定した時間と場所で受信させることができるようにしたかによって、前者は「公の放送」(3条6号)、後者は「公の送信」(3条9号)、とそれぞれ定義される。この定義により、同一の内容を異なる技術で伝達したとしても、公衆によって同時に受信されれば、放送システムあるいはインターネットを問わず、いずれも「公の放送」に統合することとしている。
- 「公の再伝達権」の創設
現行法では、スーパーやショッピングモール等の公の場所でテレビやスクリーンを用いて放送番組等を受信して同時に公衆に見せる行為は著作権法で対処することができない。そこで改正案では、こうした行為を「公の再伝達」と定義し(3条10号)、著作者には、公の放送・公の送信がされたその著作物を受信装置を用いて同時に公に再伝達する行為に対する禁止権をも有することになる(26条の2第1項)。
- 著作財産権の個別制限規定の追加・変更
現行法では、教育に関係する著作財産権の個別制限規定として、学校における「複製」と規定されているにすぎないが、改正案では、法の規定により設立された各学校並びにそれらにおいて教育を担任する者は、その授業の過程における利用に供することを目的とする場合には、その必要と認められる限度において、公表された著作物を複製し、翻案し、頒布し、若しくは公に上演し(口述が含まれる)、上映し、又は公表された著作物であって公の放送・公の送信がされるものを受信装置を用いて公に再伝達することができる(46条1項)。又、一定の条件付きで、公の放送・公の送信を行い、又は公表された著作物であって公の放送・公の送信がされるものを受信装置を用いて公に再伝達することができる(46条2項)。さらに、法の規定により設立された各学校その他の教育機関並びにそれらにおいて教育を担任する者は、非営利での教育を目的とする場合には、その必要と認められる限度において、公表された著作物を公の放送・公の送信を行い、又は公表された著作物であって公の放送・公の送信がされるものを受信装置を用いて公に再伝達することができる(46条の1第1項)。ただし、通常の使用料の額に相当する額の報酬を著作財産権者に支払わなければならない(46条の1第2項)。
又、非営利の著作物利用等に関し、現行法では、
1)公表された著作物であること、2)営利を目的としていないこと、3)聴衆又は観衆から料金を受けないこと、4)実演家に対し報酬が支払われない場合であることに加え、5)不定期な活動に限ること、これらすべてを満たす場合にのみ、公に上演し(口述が含まれる)、上映し、又は放送することができる、と解釈されている。改正案では、まず、定期・不定期の活動を問わず、上記1)~4)の条件を満たす場合には(映画館で上映された映画の著作物については上映から3年未満の場合を除く。55条2項)、公に上演し、上映することができる(55条1項)。ただし、通常の使用料の額に相当する額の報酬を著作財産権者に支払わなければならない(55条3項柱書)。もっとも、不定期な活動の場合(55条3項1号)または個人の健康といった目的で個人が私的装置を用いて定期的な公園などでの活動(音楽を流してダンスをすることなど、55条3項2号)の場合については、使用料の報酬を支払う必要はないと規定されている。次に、公に放送される著作物は、非営利かつ無料の場合には受信装置を用いて公に再伝達することができる(55条4項)。
- 孤児著作物の強制許諾制度の拡大
過去の著作物を利用するに際して、いわゆる「孤児著作物」は著作財産権者が不明であるなどの理由で利用許諾が得られない。この場合に関して、現行著作権法には規定がないため、「文化創意品」を作る過程における利用に供することを目的とする場合に限って、「文化創意産業発展法」に基づき、智慧財産局に利用許諾を申請することができる。今回の改正案では、上記利用目的の制限がなく、智慧財産局の許可処分により、使用報酬を供託することによって孤児著作物の利用を可能とする制度を設けている(69条の1)。
- 侵害とみなす行為の追加
改正案は、著作財産権を侵害する行為によって作成された物を、その事情を知りながら、営利目的で広告、インターネット又はその他の方法でその物の頒布の申出をする行為を著作権侵害とみなすことにする(87条1項6号)。